栗本百合子
Yuriko Kurimoto
《windows》(未発表作品) 1988 ca. 栗本百合子
栗本百合子は2017年12月に亡くなった。彼女が一人で生活するとともに制作していた住居兼アトリエが名古屋市内に残された。彼女の実家でもあった。近い将来にこの建物が取り壊しになるだろう、という予想のもと、親族の好意で、複数の有志が建物の中に入り、彼女が家に残したものを整理することになった。その過程の中で、インスタレーションを撮影したポジフィルム、その紙焼き、彼女自身が整理していた作品のカタログ群、初期作品、さらには習作のような作品そのものも、分散して移動させることにした。
栗本がカタログ群で最初の作品とみなしたのが、1988年のステゴザウルス・スタジオでの展示である。これらは《windows》、あるいは《seven windows》というタイトルで記録されている。これらの作品は建物の中で早くに発見されていた。いよいよ、彼女の家が壊される、というタイミングで、裏側に《windows》と記された複数のパネルが梱包された状態で発見された。これらも、生前の栗本を知る瀬戸在住の知人の倉に退避させることにした。そうした移動の中で、今回の瀬戸での展覧会で見せるというアイディアが登場した。
この展覧会の展示のために、作品を開梱した時点で、この《windows》が栗本が作ったカタログには含まれていない、ことに気づいた。彼女が残していたPCのデータにもこの作品に関する記述は残されていない。次に出来ることは、当時撮影されたポジフィルムに映っていないか調べていくことだが、その時間的な余裕は私にはなかった。この作品を栗本がどう考えていたかを今となっては知る由はない。習作だったのか、それとも未発表だったのか、あるいは未発表になってしまったのか、わからない。そもそも発表されていないので、カタログに含むことには無理があったのかもしれない。
という状況であっても、今回のような、この地域の若いアーティストが集まって展示する場所で、そして栗本自身が長く通いつめた瀬戸という場所で、彼女の出発点に位置する作品を、たとえ、未発表作品であったとしても、見せることには、意味があると思えた。大和生命ビルの窓から見える風景を描いた具象的な《windows》に比べて、色面そのものが持つ緊張感と透明感を示すものとして、その後の栗本の方向性である光と空間の関係性を示す貴重な作品、だと考えたからである。
栗本アーカイブ 拝戸雅彦
栗本百合子
- 2016年 栗本百合子+ニシテツロウ the heating room—cycle(Re-TAiL 旧尾西繊維協会ビル/愛知)
- 2014年 栗本百合子×髙柳恵里 名付けがたく捉えることもむずかしい(See Saw Gallery/愛知)
アーティスト
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