阿野太一

Daici Ano

瀬戸・2019

都市化とは仮に土地を所有する目的が農作物の生産ではなく、居住と設備のためへと変化することであるならば、瀬戸は安土桃山時代には都市としての条件が成立していたと考えられる。その時代には家内制手工業であった作陶が、工場制手工業へと向かうプロセスはおそらく日本の近代化の歴史そのものであり、今もこれからも続くその産業構造の変化によって街は姿を変え続けていく。現在は荒れ地としか思えないような場所もかつては工場であったり、廃屋が並んだように見える裏路地も往時は人々が行き交う商家が連なっていたはずである。まるで古い絵の下にもう一枚の絵が描かれていることを発見するように網の目のように広がっていた都市が隠れている。空き地にはかって何かが存在していたことを示すサインが無関心に残され、建造物の多くは無計画に増築と改築を繰り返す。所有者を示す庭や畑の痕跡、階段、パイロンやロープ、色あせたトタン、ブルーシートなどが繰り返し風景の中に姿をあらわす。その場にあるものを使い即興で「エ作的」に改変すること。計画的につくられたものが背景化するような唐突な更新は、上塗りされていく風景に短い均衡状態をもたらす。その一瞬の風景に見出される意味を考えるとき、ものをつくりながら生きてきた人々の歓びを重ねてみることはできないだろうか。

(瀬戸現代美術展2019に寄せて)
阿野太一

一連の写真は馬場正尊の唱える「工作的都市」への応答として撮影された。

阿野太一

  • 1999年 北海道大学大学院 工学研究科 都市環境工学 修了
  • 2019年 瀬戸 2015(Art Space & Cafe Barrack/愛知)
  • 2003年 t.b.k.r.t. REWIND2003≫1956(東急文化会館/東京)